イギリス大学院留学

ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)での一年間の大学院留学生活に関することなどを綴ってます。

イギリス大学院 試験編 FINAL exams

テスト後で脳みそが絞り切られてしまっていますが、試験の問題がおもしろかったので、久しぶりに更新します。

 

英語の発音を良く、そしてもっと聞き取れるように!【Yumiの脱カタカナ英語マニュアル】  

◆<363円からのネイティブチェックならアイディービジネス

 

イギリスではTerm3の最後にほとんどの授業が大きな試験を実施します。

SOAS(恐らく他の学校も)は5月の初旬から下旬にかけてまですべての試験が行われます。

  

もちろん授業によりますが、だいたい2時間~3時間のもので、成績の50%から70%ほどを占めるものが多いみたいです。

詳しくは前の記事をご参照ください。

 

studyabroadinuk.hatenablog.com

 

私がとっているコースは

1.Anthropology of Development

2.Theoretical Approaches to Social Anthropology (TASA)

3.Hindi language 1

4.Dissertation

 の4単位からなり、1の開発の人類学はin-class examと呼ばれるクラス内(1時間)で行われるテストを、すでに前学期に2回に分けて実施されたので今回はないです。

最初は1時間しかくれないくらいなら学期末にドーンと3時間やったほうがマシだわー(°Д°)

と内心怒っていましたが、3学期末になると先生たちのやさしい配慮がようやく身に沁みます。。。

 

エッセーも大変ですが、試験対策も死にそうになります。

今回受けた試験は2のTASAで、人類学に関わる200年の歴史と思想家たちの理論への理解が試されます。

 

私にとって特に大変だった点:

1.レクチャーが速すぎて授業中にとったノートがあとで見ると解読不可能

2.友達のノートを借りたかったがアルファベットの連書読めない←

友達の字が汚いというわけでは決してないけど、ネイティブの手書きの英語は無理m(__)mちーん

(他のTutorialでPCでノートをとってる子が毎回そのTutorialのメンバー全員に自分のメモを配っていたことをテスト直前に知るが時すでに遅し)

3.最初は英語だけで理解しようとWikiも日本語を見ないようにしていたら、まだ語学がそのレベルに至っていないらしく、そもそも理論の意味を完全に理解できず最後まできてしまったこと

 

なので試験前は必至に日本語でWikiりました。そしてAmazonのブックレビューのお世話にもだいぶなりました。

今だからこそおすすめできることは、授業後に必ずノートのポイントをまとめなおすことです。

そして100%理解してないと思うならば、「せっかく留学中なのに・・・」という固執を捨て、自分が一番親しみのある言語でソースを探してください。

 

 

さて、当のExamですが、今年は2時間で12問中2問を答える形式です。

年によってルールが異なり、3時間で3問を選ばせる年もあれば、選択肢が8個しかない場合もあります。今年は比較的簡単です。

 

さあ、人類学者を目指す画面の前のあなた、何問お判りになるでしょうか?!

社会学や国際関係、歴史などを専攻されている方もきっと習ったことのある内容があるかと思うので、これらの問題をどの思想家たちを用いて答えるか一緒に考えてみてください。

 

1. Do all peoples share a common history?

2. 'Anthropologists are little more than tellers of other people's stories.' Discuss.

3.'By studying man, we have made ourselves incapable of knowing him.' Discuss.

4.'Social worlds are best understood not by the study of rules but rather by the study of those who bend and break them.'. Discuss.

5. 'An understanding of power is essential to any understanding of culture.' Discuss.

6.'Marx+Weber+Durkheim=Bourdieu.' Discuss.

7.'Every custom and belief of a primitive society plays some determinate part in the social life of the community, just as every organ of a living body plays some part in the general life of the organism.' Discuss.

8. What, if anything, has feminism contributed to anthropology?

9. Critically assess the accusation that Marxism is both inherently ethnocentric and lacks an appreciation of the role played by the symbolic in human societies.

10. 'The concept of embodiment rests on the recognition that agency lies in the willed bodily actions of persons rather than their passive performance of roles.' Discuss.

11. Anthropology is 'a science which attempts the interpretative understanding of social action in order thereby to arrive at a causal explanation of its course and effects'. Discuss.

12. Analyse the course Theoretical Approaches to Social Anthropology in the light of Derrida's deconstructive approach.(先生からこの問題は選ぶなと忠告を受けましたが、判断基準が気になるところです。笑)

 

いかがでしょうか?

奇妙な問題が何問かあるのはお気づきでしょう。

先生がエッセーやテスト問題に関して何度か強調したことは、題目を真正面から答えるなということです。(Don't accept the wording of the question at face value.)

テストの題目ををエンジンとして、真の問題と課題を導き出せというのです。

 

たとえば6番のボルデューの問題は、確かにボルデューはデュルケムの認識学的、経験的手法と(日本語訳違ってたらすみません)、マルクスの資本の概念を文化と象徴のレベルに広げ、そしてヴェーバーを持ち込むことによって彼の実践理論を主体化した (何言ってるのかもはや自分でも分かりませんが、1文にまとめると要するに彼はそんな感じに上の3人の理論を統合し、さらに止揚させました)が、

 

問題はそこではなく!

 

1960年代ごろまではデュルケムに影響された、レヴィ=ストロース(Levi-Strauss)が代表するフランス構造主義(French structualism)が学術界で猛威を振るっており(表現おかしいですがそういうことなんです。)、その一方でヴェーバーに傾倒する学者はギアツ(Clifford Geertz)率いる象徴人類学(Symbolic anthropology)(文化や言語研究をより重視するアメリカ学派)の考えに追随し、人為(agency)にもっぱら重きを置いてきました。

これは一般的にstructure-agency debateとして知られています。

さらに60-70年代にかけて世界中で起こる学生運動は当然研究対象をより実世界の政治経済と引き合わせることになり、マルクス思想が再びスポットライトを浴びることになりました(Marxist political economy)。

Sherry Ortner という人類学者は、これらの主流を社会科学の3つの”theoretical constraints"と称しました。

 

そこで70年代のおわりから80年代にかけ、実践理論(Practice Theory)がキーとなり、ボルデューなど(アンソニー・ギデンスも)が出てきます。

ハビトゥス(Habitus)、チャンプ(Field)、象徴的資本/暴力(symbolic capital/violence)はボルデューの実践理論を支える基本的な概念ですが、

 

この問題の主旨は、我々は学術的な二項対立を乗り越え、その上を行かなければならないということ(らしいです。)

ボルデューはかの有名なコレージュ・ド・フランスの就任演説で、社会学の責任は人々に自由な人間がいかに自分の支配できない構造の中に無意識に取り込まれたのかを気づかせること、そしてその結果、社会変革を起こすことだと述べました。

彼の”reflective sociology"も恐らくそういうでしょう。

80年代の実践理論の最大な特徴の一つは、構造主義と理解社会学(interpretive sociology)それぞれの利点を用いて、特定の理論や経験上(empirical)の問題を解決することにあります。

 

なので6番の

’Marx+Weber+Durkheim=Bourdieu’ Discuss.

の問題に対しては最終的にボルデューがいかにいわゆる神な三人組を乗り超えたのか、(HOWの問い続けは評価されます。)

私たちもそれを踏まえこの理論を用いて、ボルデューを超えていかなければならないということを主張するのが(正しいかどうかは別として)この授業で求められている回答のラインです。

”to think with Bourdieu, necessitates thinking beyond and even against Bourdieu" (Bourdieu & Wacquant 1992:xiii) in An invitation to Reflexive Sociology

という概念に導かれ、私たちは学問的な対立の上に、自身が抱く社会的現象の人類学的な説明の試みを再定義していかなければならない・・・

 

 

と先生は暗示しながら、この導きに無知だと地雷を踏んでしまうっていう、結局割と構造的な枠組みの中で生きてるんだな・・・・と虚しさを覚えます。

そういう意味では12番のデリダ脱構築を通してこのコース自体を批判してみるのもおもしろかったかもしれない。

 

 

ちなみに過去問(Past exam paper)は学校のオフィシャルサイトでダウンロードすることができ、懐の広さにびっくりしました。

さらにアップロードされていないものは先生に直接要求していいとか・・・

 

残る試験はヒンディー語のスピーキングと筆記(3時間)のみ。

院生生活最後の山場、HANG IN THEREの遂行を誓います。

363円からのネイティブチェックならアイディービジネス  

www.amazon.co.uk

www.amazon.co.uk

www.amazon.co.uk