イギリス大学院留学

ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)での一年間の大学院留学生活に関することなどを綴ってます。

イスラムvs西欧社会 文化の衝突はこうして起こる。。。

パリテロ事件以降、イスラム教徒(ヒジャブを被った女性や”中東系にみえる人々”)に対して言葉による中傷を浴びせたり、いわゆる”復讐”と謳って、実際に命を脅かすような犯罪をした人々がいる(白人だとは限らない)。

 

例えば、ロンドンの地下鉄で、ヒジャブを被った女性が背後から何者かに押され、殺されそうになった事件があった。

調べてみたら犯人の名前はなんと「しのはらよしゆき」81歳・・・

www.dailymail.co.uk

年齢はさておき、日本人だったら尚更信じがたい。しかしこういうことは頻繁に起きていて、テレビで報道されることはない。

 

www.rt.com

 

普段街を歩いてて差別を目撃したことはないし、テレビでイスラム教徒をネガティブに感じさせる表現が使用されることもないが、パリテロ事件後のムスリムの体験をインタビューした雑誌の特集ページを読むと、

 

ヒジャブを被って電車にのると、冷たい目線―11.13の翌日だったため「今日は勘弁してよ・・・」との声が聞こえてきたり、

子供も学校で嫌な思いをしてきたなどとの証言が。

 

ロンドンの同じ大学のイスラムの子(イギリス人)によると、ある建物を眺めていたら通りすがりのおじさんに冗談じみた口調で「Are you gonna bomb the building?haha」的なことを言われたんだとか。

 

こうしたテロリストと一般市民のジェネラル化は差別であり、イスラムと西欧の溝を深めている一因になっているのは事実である。 

 

ただ、今日みなさんとシェアしたい本題は、クリスマスに私が実際に体感したイスラム教と西欧社会の文化の衝突である。

 

物語(実話ですが)の主人公は彼氏のゴッドファーザーファミリー。

娘のエミリーさんは少し前にイスラム教徒に改宗し、ヒジャブを被り出し、2週間後にマリ人(イスラム教徒)と結婚する予定。

 

そのこと自体に関しては理解のあるご両親で、娘が宗教のおかげで以前よりも地に足の着いた人間になったと思っているとのこと。

しかし、問題(その1)はクリスマスを一緒に過ごせないこと。

ただし、イスラム教徒が基督を信仰していないからという単純なものではない。

 

イスラム教について私は全く語る資格がないのだが、解釈や宗派の違いによって、どれぐらい厳格に宗教に従うのかは人それぞれである。

 

エミリーとそのマリ人の婚約者の場合、アルコールがテーブルに置いてある食事には参加できないのだという。(TABOO!)

 

ちなみに、宗教に関係なくフランス人やおそらく他の西欧人にとってもクリスマスはとても大事なもので絶対に家族と過ごすものらしい。

一人で過ごすクリスマスなんて余裕なのに←

と、私は思ってしまうのですが、とりあえず子供のころの思い出などが詰まった家族団らんの超大切なひと時だそうです。

ワイン生産大国のフランス、もちろんクリスマスもひたすら飲みます。

アペリティフ→シャンパン→白ワイン→赤ワイン、決して順序が狂うことは許されない。(°Д°)

アルコールがないクリスマスの宴ももちろん考えられない。

 

 

クリスマスから新年の間の親戚や友達との食事会で、「アルコールがテーブルに置いてあるからクリスマスに来れないイスラムの習慣」はもちろん盛んに話題にのぼり、私はそのたびびびりながら傾聴。

 

何が怖いかって、政治も宗教もアイデンティティも、人は話しているとどんどん興奮してくる。

無意識に声が大きくなってきたり、

机をたたいたり、

目を大きく見開いたり・・・

 

とにかく宗教は普段関心がない人でも何かを言わずにはいられないトピックの一つであるのだ。 

 

 

テーブルで飛び交う意見の中には、

「宗教を実践するのに、他人の習慣をやめさせるよう強制するのは間違ってる!」(彼の母)。

「宗教をすべてのものよりも上に位置づけるのは極端すぎる。」

 

難しいのは、

誰も他人の習慣をやめさせるように強制してはいない。

しかし、西欧的な習慣を犠牲にしなければ、娘と娘婿と同じテーブルにつけない。

 

自分が当事者だったらどのように考えるのだろうか。

大切に育ってきた娘、産まれた時から毎年一緒に過ごしてきた思い入れのあるクリスマスをもう二度と一緒に過ごすことができない――

 

娘と娘婿は何を思うのだろうか。

大切な行事、ママにもパパにも会いたい。でも教えを裏切ることはできない。。。

それとも

キリストなんてただの予言者だ。そしてお酒を飲むなんて汚らわしい。

と思うのだろうか。

 

私にはわかりません。なので、何がウィンウィンなのかもわかりません。

 

マリ人の彼はいい人でエミリーのご両親もうまく接しているらしい。ただ、時々宗教が理由でこのような不都合が起きるんだとか。

 

 

もう一つの不都合(その2)は、結婚式の招待状を見せてもらうと、別紙のメモにこう書いてあった:

「宗教上の理由のため、○○(彼の名前)は女性の来客にあいさつのキス(bisous)をすることはできません。また、(同じ理由のため)写真の撮影もご遠慮ください。」

 

写真もダメとなると、なかなか辛い。

以前、イギリス人の友達に「中国人(や他のアジアコミュニティ)は現地で自分たちのコミュニティを作り、そこだけで小宇宙を形成していることもあるが(ちょっとエレガントな英語をしゃべる人です)、なぜイスラムのように西欧社会と衝突することはないのだろう。We love Chinatown!」

と聞かれたことがあります。

その時はなんでだろうと色々模索したけどしっくりくる答えにありつけなかった。

でも今は、なるほど、エミリーの話を通じてその理由を痛感。

 

イスラム教徒は決して西欧社会に自分たちの文化を受け入れろと強制しているわけではない。

しかし、自分たちの宗教を実践する上で、同じ行動範囲内にいる人々に影響を与えざるを得ない不都合な状況が作り出される。

 

だいたいはリベラルな私ですが、イスラムの原理化に関してはやはり警鐘を鳴らす必要があると思う。

というのも、エミリーの結婚式の例でいうと、コーランがかかれた時代にカメラは存在しなかっただろう。

もし自分の顔を外にさらしたくないというのであれば、自分の写真だけを撮らないようお願いすればいいんじゃないのか・・・

そしてSOASのヒジャブやニカブを被った子たちは食堂やクラブでバンバンセルフィーを取り、フェイスブックにもバンバンその写真をアップしていた。

 

招待されたゲストの中には、当日宗教的な習慣の違いで口論になりそうだから行かないと参列を断った人もいるんだとか。(これもなかなかやばい。

ただし、婿さんは宗教について話すことに対してはオープンらしい。

 

 

聞いた話ばかりで申し訳ないですが(イギリスに留学すると本当に世界中の人と知り合えるので、難民の子や紛争地域から来た子の話を直々に聞けるのはとても貴重な体験です)

 

インド人の友達によると、インドから中東にビジネスの修行に出る男性が多いのですが(これはいろんな文献で見つかる事実です)、中東で保守的なしきたりを目撃し、それに憧れ、インドにその文化を持ち帰ってきたりしているそう。

おばあちゃん世代はヒジャブなんて被ってなかったのに、今はどんどん違う方向に厳しくなっているという。

 

宗教を議論するとき、最低限の尊重やアンタッチャブルな部分をわきまえるべきだということに賛同する人は多いと思いますが、宗教も文化も伝統も、何も決して不変な価値でフェアなものではない。

人類学で取り上げられているEric Hobsbawmというマルクス主義の歴史家(Marxist historian)は、

伝統はエリートや統治する者がその権力を独占し、維持するために、文化という名の中に密輸し、“発明”されたもの(Invented tradition)だと主張している。

  

創られた伝統 (文化人類学叢書)

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 英語の読みたい方はKindleでどうぞ。 

The Invention of Tradition (Canto Classics)

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なので、文化や伝統は保護するべきかという問いに対して、すべてのものにYESで答えることはできない。

 

難しいのは、原理化のムーブメントを呼び掛けている者は権力の独占が目的で悪だと決めつけやすいかもしれないけど、他者との違いへの認識や自己防御、さらに無知な幻想が原動力となっている原理化は社会の病と呼応する。

(白人の10代の女の子が厳しいイスラム原理主義にあこがれてISISに参加して、幻滅して逃げようとしたら殺されたというニュースを見ると、何がそもそも女性の弾圧に憧れを抱かせたのだろうか?と悲しいニュースだが鼻で笑ってしまいたくなる時もある。主婦になって、勉強せず、一生家で夫に仕えたほうが楽な人生が送れるとでも思ったのだろうか。主婦も一種の職業、誰もが良い主婦としてつとまるものでもない。)

 

 

みんながみんな、最初から隣人を愛せば、国籍、宗教、民族や性別を超えて誰もが一緒に平和に暮らせる。

何事も一度こじれてしまうと後戻りが困難。 

やはり日々市民レベルや地域レベルでできる「予防」が鍵だと考える今日この頃です。 

 

 

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