イギリス大学院留学

ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)での一年間の大学院留学生活に関することなどを綴ってます。

イギリスEU離脱 -元イギリス大学院留学生のBrexitに対する諸感:投票比率再考- すべてが茶番劇に見える。

最大の争点は移民問題。確かにそうかもしれない。

しかし、

都会人は残留派、田舎者は離脱派。将来を担う若者は残留派、思い出が美しい年寄りは離脱派。教養ある人間は残留派、移民に仕事を奪われることが恐怖なワーキングクラスは離脱派

 

そうやって社会の溝を深めるのはいいかげんやめにしないか!!

と、個人的に叫びたい。

 

こういうデモグラフィックに対するメディアやFB上の見解が短絡化しすぎていて「分かりやすさ」への傾倒に改めて危うさというか苛立ちを覚える。

BrexitでもBremainでも、この世が終わることはあるまい。

確かに関税とかの問題でイギリスから撤退して他のヨーロッパの国に移ろうとしている外資企業はある。

移民や難民への規制も今まで以上に厳しくなるだろう。

比較的貧しい国への拠出金も減る。

さらに、2012年にEUはノーベル平和賞を受賞しており、最も先進的に戦争の和解が進んでいる地域として大きな象徴的意義をもっていたのは確かだ。

 

でも政治家や通行人のインタビューといったら・・・

滑稽なほどにこの世の終わりであるかのような深刻な表情と口調で、

すべてが芝居じみて見えた。

そして激しく離脱派を非難する残留派は自己陶酔の中に本当の多様性を見失っているように思えた。

 

余談になるが、実際の離脱まで2年ほどの月日がかかるかもしれないそうだが、直ちに離脱の手続きを完了させなければならないとEUからの厳しい姿勢は、

日本にTPPのほぼ無条件承認を突きつけるアメリカの態度を彷彿させられた。

 

以前某有名外資コンサルティング・ファームが出版しているビジネス誌で、

ルール作りの大切さが書かれていた。

ビジネスで勝ち残るためには、単にルールに従うだけじゃなくて自分が得意なルールをスタンダードに仕立て上げ、その中で他のプレーヤーと闘うのだ。

アメリカとヨーロッパは世界規格をいくつも作ってるから当然強い。

より身近なものに例えれば、テコンドーの選手が柔道のルールで柔道のプロと戦わなきゃいけないのと同じかもしれん。

とにかくそこら辺のひしめきあいはロジックとか公平性を一旦put asideして忘我の演技で押しのける他すべがないのかもしれん。

 

 

個人的な意見はさておき、改めて起きたことを整理すると、

Brexit投票率72.2%の53.2%で決まりました。

ポンドは激しく下落し、1985年と同水準の安さを記録した。

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出典:Pound plunges after Leave vote - BBC News

 

2014年夏、ポンドに換金したときは確か1£:170~180円ぐらいのレートで、後数年遅く(or早く)生まれていれば・・・と切に願った。

これから留学行く人、むしがよすぎるぜ。

そしてロンドンに残してきた口座に入っている大金が、回復まで無事休眠していてくれるかとても心配である。

(ヨーロッパはどうか分からないけど、北米では独身の老女などの口座は常にチェックしていないと様々な理由をつけて詐欺まがいで銀行に金を狙われると聞いたことがある。)

 

 

さて、国民投票の結果を受けて、注目を集めているのが

年代別、地域別、社会階級別

の投票傾向だ。

 

まずは年代別であるが、

10-20代は約8割

30-40代は約6割

50以上のいわゆるシニア層は約4割が残留に投票している(と報道されている)。

すごく分かりやすい図その①

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出典:POLITICO Europe on Twitter: "EU referendum by age group — 75% of voters aged 24 and under voted against Brexit https://t.co/eQci0vNffx https://t.co/UADq1NaL8v"

 

 

次に地域別だが、ロンドナー、スコットランド及び北アイルランド残留派が多数らしい。

すごく分かりやすい図その②

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そして、社会階級別

おカネ持ってたらin、おカネ持ってなかったらout...

'If you've got money, you vote in ... if you haven't got money, you vote out' | Politics | The Guardian

そういう人もいるかもしれないけどさ。

というかそういう人が主に取材されているんだけどさ。

というかそういういかにも移民に仕事奪われて仕事減りました的な人の発言が取り上げられるんだけどさ。

 

でも、全員が全員そうじゃないんだよ。

 

一般的に社会問題に関心が高いとか言われるような学生や若者がFBで離脱派をUneducatedのように非難するの、やめてほしい。

スコットランド独立をめぐるレファレンダムでも驚いたのが、

イギリスの国民投票ってホントにほぼ真っ二つに分かれること!

2~3%の違いで多数決の原理がアプライされるけど、

40%の人たちって決してマイノリティではないと思う。

 

ロンドナーは投票の結果にショックを覚えている・・・とか報道あるけど、

ロンドンでだって40.1%の人が離脱に投票してるから。

 

これから社会の力となっていく若者ではなく、

年寄りのせいで離脱が決まった的な風潮だけど、

50-64歳は44%

65+は39%残留に投票している事実、過小評価されていないですか?

 

 

確かに人々が期待してるような傾向、だいたい6:4の割合で出てるけれども、

逆にそれ以上極端に票が偏っていないのがむしろ不思議なのは私だけでしょうか。

 

これ以上Social Divisionをあおるのはもうやめようよ、世界のメディア。

 

英国のEU離脱を巡って私が唯一書き残しておきたいことはこれに尽きます。

 

更に詳しいデータが見たい方はこちらから↓

www.telegraph.co.uk

 

おまけ:

NHKって意外と中立的だから好きです。